自己脂肪由来幹細胞療法は、患者自身の脂肪組織から幹細胞を抽出・培養し、体内に注入する再生医療の一種です。
これらの幹細胞は高い組織修復能力を有しています。
幹細胞の三大特性
自己複製能:非対称分裂により、母細胞と同一の娘幹細胞を生成し、幹細胞のプールを維持します。
多分化能:周囲の微小環境のシグナルに応じて、複数の機能的細胞へ分化が可能です。
パラクリン効果:成長因子やサイトカインを分泌し、周囲の微小環境を調節することで組織の修復や再生を促進します。
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脂肪由来間葉系幹細胞の臨床応用
脂肪由来間葉系幹細胞は、採取が容易で免疫原性が低く、再生医療において有望な細胞ソースとされています。中胚葉系以外への分化能力も有しており、加齢に伴いその数と機能が著しく低下することが知られています。これはテロメアの短縮やエピジェネティック変化が一因であり、こうした細胞の補充は抗加齢療法の科学的根拠ともなります。
● 代謝性疾患:2型糖尿病(膵島機能の改善)、脂質異常症、慢性腎疾患、高尿酸血症(痛風)
● 神経系疾患:脳梗塞後の神経機能障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷
● 循環器疾患:心筋梗塞、慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患(下肢虚血など)
● 消化器疾患:肝硬変、炎症性腸疾患(IBD)、膵機能障害
● 呼吸器疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息
● 免疫系疾患:関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)
● 運動器疾患:変形性膝関節症、膝関節可動域制限
主な臨床応用領域には以下が含まれます:
脂肪採取と凍結保存技術の革命:少しの傷で若さを維持!
低侵襲の脂肪吸引と液体窒素による凍結保存技術の進歩により、自身の脂肪細胞を将来の再生医療やエイジングケアに備えた「若さのストック」として長期保存できる時代が到来しており、人類が長年追い求めてきた若さの維持が、もはやフィクションではなく現実の選択肢となりつつあります。
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なぜ脂肪幹細胞はすぐに減ってしまうのでしょうか?
従来の脂肪移植手術では、移植後に最大70%の脂肪細胞が死滅し吸収されます。当院はこれらの障壁を突破し、京都大学と共同で、より優れた細胞採取、前処理、保存、そして再注入技術を世界中の友人に提供しています。
技術革命:低侵襲脂肪吸引と、液体窒素凍結保存の黄金の組み合わせ
従来の脂肪移植では移植後に最大70%の脂肪細胞が死滅・吸収されることが課題でした。
当院では京都大学と共同開発した技術により、低侵襲脂肪吸引と液体窒素凍結保存を組み合わせた革新的手法で、わずか直径2mmの傷から脂肪を採取し、特殊な1mmマイクロニードルによる従来よりも小さい創傷面積、陰圧による組織損傷の回避、特許取得済み保存液による外気遮断保存が可能です。
全工程は短時間で完了し、外傷や痛み・感染のリスクを抑えた脂肪細胞採取を可能にしています。
-196℃の超低温冷凍:時間停止の魔法
液体窒素は脂肪細胞の壊死を予防します。
▶ プログラム制御された冷却装置により、細胞破壊を回避し安全な保管が可能です。
▶ ジメチルスルホキシド(DMSO)が、細胞を保護するガラス化層を形成します。
▶ 液体窒素タンクには多段センサーが搭載されており、温度変動は±2℃以内に管理されています。
▶ クライオ電子顕微鏡による検証で、最適化された凍結脂肪細胞のミトコンドリア構造に損傷はなく、解凍後の代謝活性回復率は90%以上です。
▶ 凍結から蘇生までの全工程を公開し、細胞生存率向上のための取り組みを透明化しています。
治療の全プロセス
01 初期診断・評価
▶ 病歴および症状の経過確認
▶ これまでの治療効果の評価
▶ 血液検査(腫瘍マーカーを含む各種バイオマーカー測定)
▶ MRIおよびCT画像の詳細解析
02 脂肪採取
▶ 局所麻酔下における腹部または大腿の皮下脂肪組織の採取(採取量20~30ml)
▶ 医薬品医療機器総合機構(PMDA)および医療用GMP基準に準拠した無菌操作環境下での脂肪採取
03 細胞培養
▶ 脂肪組織由来の間質血管細胞フラクション(SVF)に対する酵素分解処理
▶ 間葉系幹細胞(MSC)の4週間にわたる増殖培養
▶ 培養を経て、最終的な細胞数は約1億個。
▶ 培養細胞の安全性・有効性を確認する品質管理検査の実施
政府認定の細胞加工施設(CPC)にて実施:
04 細胞投与
▶ 静脈内投与(静注)および病変部への局所標的注射